※この記事は「環境認識その⑤:上昇トレンドは継続か失速か?」の続きです。
前回の記事はこちら →
環境認識その⑤:上昇トレンドは継続か失速か?20MAの変化と高値更新・安値割れ
20MAだけでは「相場の格」がわからない
前回は、20MAと高値・安値の更新状況から「今の上昇が継続しそうか、それとも失速しそうか」を見ていく方法を整理しました。
ただし、20MAだけを見ていると、
「そもそもここは長期上昇の押し目なのか?」
「それとも長期下降トレンドの戻りなのか?」
という、大局的な位置づけが分かりません。
同じ「上昇の失速」に見えても、200MAと20MAの位置関係によって、その現象の意味はまったく変わります。
今回は、200MAと20MAを組み合わせて「押し目」なのか「戻り」なのかを判断する、大局視点の環境認識を整理していきます。
200MAと20MAの役割の違い
まずは、2本の移動平均線の役割をシンプルに整理しておきます。
- 200MA:長期トレンド(相場の本流・地合い)を示す目安
- 20MA:短期〜中期のトレンド(直近の勢い)を示す目安
イメージとしては、
200MA=大河の流れ、20MA=その中の波
のような関係です。大河が上流から下流へ流れている限り、多少の逆流があっても「全体としてはどちら向きか」は変わりません。
ケース①:200MAが20MAの下にある場合(長期上昇の中の押し目)
200MAが右肩上がりで、なおかつ20MAが200MAの上側に位置している場合、相場は「長期上昇トレンド」の中にいると判断します。
このとき、前回⑤で解説したような短期上昇の失速が起きても、それは
「長期上昇トレンドの中の押し目形成」
である可能性が高くなります。
つまり、チャート上で一時的に高値更新に失敗したり、20MAを割り込む動きが出ても、
・200MAは依然として上向き
・価格が200MA付近で支えられている
のであれば、「売り込む局面」ではなく次の押し目買い候補を探す局面と考えることができます。
ケース②:200MAが20MAの上にある場合(長期下降の中の戻り)
逆に、200MAが右肩下がりで、20MAが200MAの下側に位置している場合、相場の本流は「長期下降トレンド」です。
この環境では、短期的に強く上昇しても、それはあくまで
「長期下降の中の戻り(調整上げ)」
であることが多くなります。
⑤で登場したような短期上昇の高値更新失敗は、
むしろ「戻り売りの最終確認サイン」として機能する場面です。
20MAが頭を押さえられ、再び200MA方向へ価格が戻り始めるようなら、売りシナリオを優先するのが自然な考え方になります。
ケース③:20MAと200MAが接近・クロスしているとき
20MAと200MAが交差したり、絡み合うような動きになっているときは、
「長期の方向感がはっきりしていない相場」=レンジ・転換期であることが多いです。
この局面では、
・短期の継続/失速シグナルが機能しづらい
・だましのブレイクや急反転が増えやすい
ため、「無理に大きく狙わない」「ポジションサイズを落とす」 といった対応が有効です。
200MA × 20MA × ダウ理論の“三点セット”で相場の意味を変換する
ここまで見てきたように、
同じ「高値更新失敗」「安値割れ」「20MA割れ」でも、
200MAとの位置関係によって、その意味は大きく変わります。
- 長期上昇(200MA上向き・20MAが上)なら:押し目候補として買い場を探す
- 長期下降(200MA下向き・20MAが下)なら:戻り売り候補として売り場を探す
- 20MAと200MAが絡んでいるなら:方向感が薄いため、様子見または小さく攻める
環境認識のゴールは、「今、自分が見ている波が、大きな流れの中でどんな意味を持っているか」を理解することです。
20MAによる短期の継続/失速判断に、200MAという大局の軸を組み合わせることで、シナリオが一気にブレにくくなります。
■ 次回予告
次回の記事では、これまで整理してきた
「ダブルボトム → 20MAの継続・失速判断 → 200MAによる大局判断」
をさらに発展させ、
水平線・トレンドラインを使ったレジスタンス/サポートの見極め方
を解説します。
「どの水平線が本当に効くのか?」「どこで反発しやすいのか?」
といった実践的なラインの引き方と、その根拠を整理していきます。


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