この記事は「環境認識」シリーズの理論編です。考え方の全体像は 環境認識の考え方|「どう考えるか」を体系的に学ぶロードマップ にまとめています。
チャートパターン全体の基本は チャートパターンとは?逆三尊・三尊・Wボトムとだましの見方 で解説しています。この記事は、その中の逆三尊を掘り下げます。
逆三尊は、底打ちのパターンとしていちばん有名な形です。3つの安値と1本のネックライン。形はすぐ覚えられます。ところが実戦では「形は合っているのに上がらない」「ネックラインを抜けたと思ったら戻された」という経験を、ほとんどの人がします。
原因は、形を「絵」として見ていることにあります。逆三尊をダウ理論で読み直すと、これは「安値の切り上げ」と「戻り高値の更新」が順番に起きる構造の別名です。構造で見れば、どこまで来たら本物で、何が欠けていればだましなのかが、形の記憶に頼らずに判断できます。この記事では、ネックラインの引き方と、だましを見分ける3つの確認を整理します。

結論:逆三尊は「ダウの転換」の形。3つの確認が揃う前は入らない
逆三尊で確認するのは3つです。①右肩の安値が頭より高いこと(安値の切り上げ)、②ネックラインを実体で上抜けること(戻り高値の更新)、③抜けたあとの押しがネックラインで支えられること(レジサポ転換)。この3つが揃って初めて、下降トレンドが否定され、買いの根拠になります。右肩が見えた段階、ヒゲがネックに触れた段階は、まだ「形が見えた」だけです。
この記事の要点は次のとおりです。
- 逆三尊=左肩・頭・右肩の3安値と、2つの戻り高値を結んだネックライン
- ダウ理論で読むと、右肩は安値の切り上げ、ネック抜けは戻り高値の更新
- ネックラインは2つの戻り高値を結ぶ。水平でなくてよい
- だましの見分けは3つ:実体か・リテストか・200EMAはどこか
- 形が完成しても、200EMAの下なら「戻り」の可能性を残す
逆三尊とは:3つの安値と1本のネックライン
逆三尊は、下落の途中で3つの安値をつけ、真ん中(頭)がいちばん低く、左右(肩)がそれより高い形です。「逆三尊底」「ヘッドアンドショルダーズ・ボトム」も同じものを指します。
3つの安値の間には、2つの反発高値があります。左肩から頭へ向かう前の高値と、頭から右肩へ向かう前の高値。この2点を結んだ線がネックラインです。逆三尊の「完成」とは、価格がこのネックラインを上抜けることを指します。逆に言えば、右肩ができただけでは、まだ何も完成していません。
ダウ理論で読み直す:右肩は「切り上げ」、ネック抜けは「高値更新」
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。逆三尊の各パーツを、ダウ理論の言葉に置き換えてみます。
頭は、下降トレンドの最安値です。右肩は、その最安値を割らずに止まった安値——つまり安値の切り上げです。下降トレンドの定義(安値を更新し続ける)が、ここで初めて崩れます。そしてネックラインの2点目は、頭のあとにつけた戻り高値です。これを上抜けることは、戻り高値の更新にほかなりません。
安値の切り上げと高値の更新。この2つが揃うことが、ダウ理論における下降から上昇への転換の定義です。逆三尊は、その転換が「形」として見えたものにすぎません。だから、形を覚える必要はないのです。右肩の安値が頭より高いか、ネックを実体で抜けたか——構造の2点だけを確認すれば、逆三尊の「完成」は自動的に判定できます。三尊はこの鏡像で、高値の切り下げと安値の更新です。
ネックラインの引き方:2つの戻り高値を結ぶ。水平でなくてよい
ネックラインは、左肩のあとの高値と頭のあとの高値を結びます。教科書の絵では水平ですが、実際のチャートでは傾いていることの方が多い。傾いていても構いません。2つの高値を結んだ線が、そのまま「売り方が守っている境界」だからです。
実戦での扱いは2つあります。ひとつは、傾いた線をそのまま使う方法。もうひとつは、2点目の高値(頭のあとの戻り高値)に水平線を引いて使う方法です。当ブログでは後者を優先しています。ダウ理論で言えば、更新すべきは「直近の戻り高値」なので、その価格に水平線を引く方が判断が一意に決まります。傾いた線は補助として残す程度で十分です。
そして線は点ではなくゾーンです。ヒゲの先端と実体の密集帯を含む幅で捉える——水平線の記事で書いた考え方は、ネックラインにもそのまま当てはまります。
だましを見分ける3つの確認
「逆三尊が完成したのに下がった」の答え合わせをすると、ほとんどの場合、次の3つのどれかが欠けています。
①実体で抜けたか。ヒゲがネックラインを超えただけの足は、上抜けではありません。売り方の防衛が終わったことを示すのは、終値がネックラインの上で確定した足です。ヒゲでの上抜けで飛び乗ると、その足の実体がネックの下に戻った瞬間にだましの形が完成します。
②リテストで支えられたか。実体で抜けたあと、価格は一度ネックラインまで戻ってくることが多い。ここで支えられれば、ネックラインがレジスタンスからサポートへ転換したことが確認できます。逆に、リテストで実体がネックの下に沈めば、上抜けは失敗です。エントリーは、このリテストの反発を確認してから——プライスアクションの記事の3ステップと同じ手順です。
③200EMAはどこにあるか。逆三尊が200EMAの下で完成した場合、それは下降トレンドの中の「戻り」である可能性を残しています。形が完成しても、頭上に200EMAがあれば伸びにくく、200EMAで抑えられて再び下落する場面は珍しくありません。「200EMAの下での上昇はただの戻り」という当ブログの原則は、逆三尊にも例外なく適用します。
実例:ブログの逆三尊3本から
この3つの確認を、実際のチャートで扱った記事があります。
GOLD 4時間足|逆三尊で200EMAを超えた後に飛び乗らない理由は、確認③の実例です。逆三尊が完成し200EMAも超えたのに、ブレイク直後には入らず、リテストを待った場面。日経225CFD 4時間足|フィボ61.8%×逆三尊×チャネル抜け、それでもまだ買わないは、根拠が3つ重なっても確認②(実体とリテスト)が揃うまで待った場面。GOLD 4時間足/30分足|売りと買いのフィボが重なる場所、逆三尊完成でも「実体抜け」まで待つは、確認①(右肩の切り上げ)まで揃った状態で、ネックライン=レジサポラインの実体抜けを待った場面です。
3本に共通するのは、「形が完成した」と「入ってよい」の間に、必ず確認の段階を置いていることです。
まとめ
逆三尊は、安値の切り上げと戻り高値の更新が形になったもの——ダウ理論の転換そのものです。だから形を暗記する必要はなく、①右肩の安値が頭より高いか、②ネックラインを実体で上抜けたか、③リテストで支えられたか、の3つを確認すれば足ります。
そのうえで、200EMAの位置は最後まで疑う。形の完成は「入ってよい」の合図ではなく、「確認を始めてよい」の合図です。逆三尊で負ける人と勝つ人の差は、形を見つける力ではなく、この確認を省略しない姿勢にあります。
関連記事
- チャートパターンとは?逆三尊・三尊・Wボトムとだましの見方
- ダウ理論とは?押し安値・戻り高値で「目線」を決める使い方
- レジサポ転換とは?サポートとレジスタンスが入れ替わる仕組みと使い方
- プライスアクションとは?パターンを覚えるより大事な「反発の確認」3ステップ
- ブレイクの質とは?本物とダマシを見分ける3つの基準
この記事は「環境認識」シリーズの一部です。全体像は 環境認識の考え方|ロードマップ、実例は 環境認識の実戦ガイド からご覧いただけます。

コメント